酷暑だった夏も終わり、9月に入っていきなり涼しくなりましたね。このような急激な気温の変化は犬、特に子犬とシニア犬の体調に大きく影響する場合があります。
今回は夏から秋に急増する犬の健康被害についてご紹介していきます。
皮膚に関するトラブル
夏の高湿度から秋の乾燥期に移行すると、空気の乾燥が急激に進むため、犬の皮膚にトラブルが起こりやすくなります。
ノミ、ダニの寄生による皮膚炎
犬の皮膚にノミやダニが寄生すると皮膚炎を発症する場合があります。1年を通して7月~10月に罹患率が上昇するといわれており、ノミ、ダニは人にも寄生するので注意が必要です。お散歩の後はノミ取りコームでブラッシングしたり、シーズン中はノミ、ダニ予防薬の滴下などで予防しましょう。また、寝床の敷物やベッドにダニや雑菌が繁殖しないよう清潔に保つことも重要です。
アレルギーによる皮膚トラブル
1年の中で夏から秋に移行する時期に、アレルギーを持つ犬の血中抗体価が上昇することが証明されています。
代表的なアレルゲンはヒダニやコナダニです。これらは室内のハウスダスト、布製品や布団などに繁殖するダニで、皮膚の赤み、激しいかゆみ、更に進むと化膿を引き起こします。こまめなお掃除と除菌で予防できます。
呼吸器や循環器に関するトラブル
夏の高温から秋の気温低下が進むと、冷たい空気が粘膜を乾燥させるため、呼吸器にトラブルが起こることがあります。また、気温が低下すると、血圧上昇と心拍数増加に伴って循環器にトラブルが起こる確率が高くなります。
鼻炎
冷たい空気によって犬の鼻の粘膜が乾燥するとウィルスや細菌に感染しやすくなり、鼻水、くしゃみ、鼻の皮膚のひび割れなどの症状を引き起こします。室内の湿度を50%くらいに保つよう調節する、鼻が乾いていたら(寝ている時以外)ワセリンを少量塗るなどで予防しましょう。
肺炎
冷たく乾燥した空気で気管支粘膜が荒れることでウィルスや細菌に感染してしまう、または喘息やアレルギー、免疫力低下など様々な原因によって発症します。主な症状は元気がない、疲れやすい、食欲の減退、呼吸が荒く苦しそう、呼吸のたびに痰が絡むような呼吸音がするなどで、予防が難しいので厄介な病気です。
うっ血性心不全
1年のうち9月から11月の発症率が高い病気で、気温が低下することで血圧が上昇し、心拍数が増加することで発症しやすくなるといわれています。ただし、うっ血性心不全は心臓病の末期症状であり、フィラリア感染症、心筋症、僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病が悪化して心臓に血液が溜まり、処理しきれない血液や水分が肺に溜まって肺水腫を引き起こす症状を指します。主な症状は水の多飲、嘔吐に似たような重い咳、呼吸困難、舌が紫色になる(チアノーゼ)、立ったまま動かず呼吸が苦しそう(心不全発作)などです。発作を繰り返すうちに急性腎不全や多臓器不全などで命を落とすこともあります。心臓病は予防が難しく、日頃から動物病院で定期的な検診を受けることをおすすめします。
感染症
秋に気温が下がり始めて空気が乾燥してくると、犬の気管支や鼻の粘膜も乾燥が進み、夏バテなどで体力と抵抗力の低下も伴ってウィルスや細菌に感染しやすくなります。
レプトスピラ症
8月~11月に感染率が高くなる病気で、レプトスピラ属の病原性を持つ細菌に感染すると発症します。主な症状は3つに分類されています。
- 不顕性型・感染しても明らかな症状が出ないまま自然治癒します。
- 出血型 ・食欲不振、目の充血、嘔吐、吐血、鼻血、血尿、血便、高熱、口腔内や白目、腹部の黄疸などがみられます。
- 黄疸型 ・高熱、絶食、震え、歯茎の出血、嘔吐、口腔内や白目、腹部の黄疸などがみられます。
出血型と黄疸型は深刻な症状で、シニア犬と子犬は重症化することも少なくありません。
また、レプトスピラ症は人獣共通感染症のひとつで人にも移る病気です。愛犬の罹患で看病をする時は必ずマスクと手袋を着用して、看病時に接触した衣服は必ず着替えるよう徹底する必要があります。実質的な予防策は毎年のワクチン接種です。
ケンネルコフ(犬伝染性気管支炎)
犬風邪と呼ばれる病気で春や秋に発症しやすく、犬アデノウィルスやパラインフルエンザウィルス、細菌などで単独、または複合感染することで発症します。初期症状は乾いた咳で、進行すると痰が絡む湿った咳に変わり、更には激しい咳で嘔吐したり、発熱、食欲低下がみられます。肺炎などの合併症にも注意が必要です。実質的な予防策は毎年のワクチン接種です。
子犬やシニア犬には念入りなケアを
秋は夏よりも日中と夜の気温の差が大きくなり、時に真夏日、時に冬のような寒さに見舞われたりで、犬の自律神経は不安定になりがちです。
6ケ月未満の子犬は体温調節機能が充分に発達しておらず、逆に7才以上のシニア犬はその機能が低下しているため、寒暖差の激しさに上手く対応できません。また、空気の乾燥によって粘膜を痛めない対策も必要です。
夏に食欲が落ちて体重が減った場合は、秋のうちに寒い冬に向けて体重を戻すために食事をコントロールしましょう。涼しくなっても食欲不振が続くようでしたら注意しましょう。
ポイント1
敷物などで床からの冷気対策と、室温と湿度を一定に保つよう空調をコントロールしましょう。
ポイント2
減ってしまった体重を戻すため、給餌量を増やすか一時的に高カロリーのフードにチェンジしてみましょう。
ポイント3
食欲不振を軽く見ず、念のために動物病院で検診を受けましょう。
まとめ
季節の変わり目、特に秋から冬に向かうこの時期は暑さから寒さへの体内変換期、人も体調を崩しやすい要注意シーズンです。子犬は身体機能の未熟さ、シニア犬は身体機能の衰えにより、体調を維持するためには若い健康な犬以上に飼い主さんの助けが必要です。念入りにケアしていたにも関わらず、どうしても避けられずに病気を発症してしまうこともあると思いますが、知識を持つことでそれが対抗策やケア法を生み出すキーワードになることもありますので、この記事が参考になれば幸いです。
季節はこれから寒い冬に向かいますが、暖かい心で飼い主さんも愛犬もほっこりできる秋を過ごしてくださいね。
プロフィール
佐藤香織
2004年~2017年8月までミニチュアダックスフント専門のブリーダーとして貴重な血統を繋ぐための最低限のブリーディングを担い、公的な資格はありませんが、多数の犬の飼育に必要な生態学や心理学を書籍やベテランのブリーダー、実際の犬たちと共に学んできました。現在は10頭のミニチュアダックスフントと保護猫6匹を飼育しながらペットに関する記事を主とするライター業と、ペット飼育に関するペットライフアドバイザーとして活動しています。JKC認定資格 愛犬飼育管理士 保有
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