犬のホルモン系の病気で一番多い「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」。実は人間よりも犬の方が、発症率は高いのはご存知でしょうか。
今回は症状や病気との付き合い方について考えてみたいと思います。

犬のクッシング症候群とは
クッシング症候群は別名・副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)と呼びます。何らかの原因により、副腎皮質(※1)からの必要以上のホルモン(コルチゾール(※2)ほか)が分泌されることにより起こる病気です。
※1 副腎とは、腎臓の近くにあるホルモンを分泌する臓器です。そして、副腎は皮質と髄質に分かれており、それぞれの場所で複数のホルモンを分泌します
※2 コルチゾールとは、ストレスから体を守り、血圧を正常に保ったり、糖を調節したりする身体にとって必要不可欠なホルモンです
クッシング症候群になりやすい犬種
好発犬種としては、プードル、ダックスフンド、シュナウザー、ボクサー、ボストンテリア、ビーグルなどがあげられますが、5歳以上の全ての犬種で発症の恐れがあります。
クッシング症候群を引き起こす原因は?
クッシング症候群は、血液中のコルチゾールが過剰になることで起こる病気です。過剰になる原因は3種類に分けられます。
①下垂体腫瘍
脳の下垂体からの指令により、コルチゾールの分泌される量が調節されます。その為、下垂体に腫瘍が出来てしまうと間違った指令を出し、コルチゾールを過剰に分泌してしまう場合があります。犬のクッシング症候群は、約90%が下垂体腫瘍と言われています。
②副腎腫瘍
副腎自体が腫瘍化してしまうと、コルチゾールの分泌が過剰になってしまいます。高齢の犬で発症しやすい傾向があります。
③薬の副作用
薬の副作用により、医療性クッシング症候群が発症することがあります。他の病気の治療の為で、長期間ステロイドの薬を使用しているとコルチゾールの量が増え過ぎてしまいます。これはステロイド自体が副腎皮質ホルモンの一つである為です。ステロイドの限界値は個体差があり、長期間使用したからといって全てに症状が出るとは限りません。
クッシング症候群の症状
クッシング症候群は5歳以上の中年齢に発症する疾患である為、老化現象のひとつと勘違いしてしまう場合があります。また、ホルモンの病気であるゆえに、様々な症状を引き起こすのが特徴です。
●多飲多尿
クッシング症候群の代表的な症状です。おしっこの量がとても多くなり、それを補う為に水をガブ飲みします。
●毛が抜ける、皮膚の炎症
広範囲に左右対称の脱毛がみられます。また慢性炎症により皮膚が黒ずむ(色素沈着)、血管が目立つくらい皮膚が薄くなる場合もあります。
●腹部が膨らむ
加齢のせいか最近太ったかも…と思ったお腹の膨らみが、クッシング症候群の症状だったケースも少なくはありません。人間のビール腹のようにぽっこりと膨らむのは、肝臓の腫大や内臓脂肪の増加などによるものです。
●散歩に行きたがらない
下垂体の腫瘍によるクッシング症候群の場合、腫瘍が脳を圧迫する為、運動機能に影響が出ます。元気がなく、動くことが億劫になります。
●パンティング
ベロを出してハッハッと激しい呼吸をしている状態です。腫大した肝臓の圧迫により、呼吸が苦しくなります。
クッッシング症候群は、上記のような症状をそのまま放置してしまうと、やがて心臓や肝臓、関節、免疫系統にまで浸食し、命に危険を及ぼす場合があります。

クッシング症候群の検査とは
①血液検査でコルチゾールを調べる
クッシング症候群を疑う症状がある場合、まず血液検査で血液中のコルチゾールが過剰に出ていないかを調べます。
②超音波検査で腫瘍の場所を調べる
コルチゾールが過剰に分泌される原因を調べます。超音波検査で脳の下垂体にあるか、副腎にあるのかでその後の治療方針が決まります。
③CTやMRIで脳の腫瘍を確認する
超音波検査により下垂体腫瘍の可能性があると分かった場合、CTやMRIで画像検査を行います。それによって脳の下垂体の腫瘍を確認します。
クッシング症候群の治療方法
クッシング症候群の治療は、原因によって異なります。
①下垂体腫瘍の場合
●投薬治療
飲み薬による治療です。過剰に分泌されているコルチゾールを抑制します。腫瘍が小さい場合有効です。
●放射線治療
腫瘍が大きい場合は放射線を照射して、腫瘍を出来る限り小さくします。その後、必要に応じて飲み薬でコルチゾールの分泌を抑制します。
●外科切除
非常にまれですが腫大した下垂体を外科的に切除する方法もあります。小型犬や短頭種では外科切除は不可能になります。
②副腎腫瘍の場合
●投薬治療
飲み薬による治療です。下垂体腫瘍の場合と同様の薬を服用します。
●外科切除
腫瘍化してしまった副腎を外科的に摘出します。
③薬の副作用の場合
原因となるステロイドの服用を中止すると治ります。但し、急にステロイドをストップすると副腎不全を起こす恐れがありますので、長期間かけて徐々に減らしていきます。
治療期間はどのくらい?
下垂体・副腎腫瘍いずれの場合でも、外科的治療により腫瘍を切除することが根本的な治療になります。一般的には、投薬によりコルチゾールの分泌を減少させる治療が一般的です。投薬での治療の場合、即効性はなく、長期間飲み続けることにより、症状が緩和されます。脱毛や皮膚病の症状の改善は1〜2ヶ月ほどかかります。
投薬の注意点、副作用の心配について
薬を飲ませはじめたら、愛犬の様子に変化がないか注意するようにして下さい。特に多飲多尿の症状については、早めに効果が現れるでしょう。逆に、元気がなくなったり、下痢や嘔吐をするなど、投薬前には見られなかった症状が現れたら、薬が効き過ぎてしまっている可能性があります。すぐに動物病院を受診しましょう。
長期的な治療の場合、定期的な検診と血液検査が必要です。愛犬の体調の変化を見逃さないようにしましょう。
クッシング症候群は完治できる?
クッシング症候群においては完治させることがゴールというよりも、体調を管理しながら病気と上手につき合う事を心がけましょう。また、治療中に気をつけたいのが合併症です。神経症状や血管梗塞、腫瘍の転移などが考えられます。
●下垂体腫瘍の場合
腫瘍が小さく、投薬によりコルチゾールの分泌をコントロール出来ていれば、症状は改善出来るでしょう。腫瘍が大きい、放射線治療が難しい場合は数年以内に認知症など神経症状が現れる可能性があります。
●副腎腫瘍の場合
腫瘍が完全に切除することが出来れば、症状は緩和され寿命を全うできるでしょう。腫瘍の切除が難しい場合、投薬で症状の改善は期待出来ますが、腫瘍の進行や個体差により予測が難しいとされます。
クッシング症候群を予防するには
効果的な予防法は残念ながらありません。
早期発見・早期治療が重要となりますが、初期症状が気づきにくいという難点があります。愛犬の飲水料、おしっこの量、皮膚や被毛の状態など日々の変化を見逃さないようにしましょう。「加齢のせい」と思い込んでいると、症状が悪化していく場合もあるので非常に危険です。何らかの症状が当てはまる場合は、早めに動物病院へ相談をしましょう。
まとめ
犬のホルモン系の病気の中で、最も発症が多いと言われているクッシング症候群。中年齢以降で発症することが多い疾患の為、老化現象の一つと思い見逃す場合があります。どの犬種でも発症する可能性がある病気です。まずはきちんと病気について理解しましょう。また、愛犬に発症した場合は病気と向き合い、闘病生活を支えてあげましょう。


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